民法改正(令和元年7月1日)により、遺言執行者の立場・権限がより明確になりました。
今回はその中から一つ、遺言執行者が今までできなかったものができるようになったものをご紹介します。
(今までは)
「○○不動産を、Aに相続させる。遺言執行者はBを指定する。」という遺言の場合、Aは単独で自己名義に名義変更できるので、遺言執行者が登記する権限は顕在化しないという理由から、遺言執行者であるBは○○不動産の名義変更手続き(相続登記)をすることができないとされてきました。
(改正後は)
上記のような遺言を特定財産承継遺言と呼び、遺言執行者が単独で相続登記ができるようになりました。
なお、この場合でもA自身が単独で相続登記ができることに変わりありません。
(根拠条文)民法第1014条第2項
遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
遺言執行者に関連して、もう一つご紹介します。
「○○不動産を、Aに遺贈する。遺言執行者はBを指定する。」という遺言ではどうでしょう・・・・。
この遺言の場合、不動産登記法60条によってA(受遺者)とB(遺言執行者)が共同して登記申請しなければなりませんでしたが、改正により、受遺者A(相続人に限る)が単独で登記申請できるようになります。(令和5年4月1日から施行)
なお、受遺者が相続人でない場合は、今まで通り受遺者と遺言執行者との共同申請になります。
(根拠条文)不動産登記法第63条第3項
遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第60条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。
遺言執行者の権限が強化された一方で、遺贈の受遺者にとっては有り難い改正になりますね。